26AW ウールのコート、徹底比較!

はじめに:今年のウールコートは、4着あります

こんにちは、デザイナーのマールです。

今年の秋冬、foufouからお届けするウールのコートは、全部で4着になりました(ショートコートやベロアのジャケットとかを除く)一着ずつ商品ページで丁寧にご説明しているのですが、店頭やDMでいちばん多くいただくのは、もっと切実な質問です。

「結局どれがいちばん暖かいんですか?」 「重いのはどれ?肩が凝るのは困ります」 「一着しか買えないなら、どれがいちばん使えますか?」

わかります。コートは一年で一番高いお買い物になりがちですし、冬の間、かなりの頻度で着ることになります。そして、できれば長く着たい。条件はきちんと比べておきたい。

そこで今回は、作った本人が4着を並べて、暖かさ・重さ・汎用性・テイストを、できるだけ正直に比べてみることにしました。褒めるだけでなく「ここは苦手です」というところも書いていきます。皆さんにぴったりの一着に出会っていただきたいです。

今年のラインナップはこちらです。

11月販売予定

12月販売予定

  • french half coat(フレンチハーフコート) 

まずは早見表で全体をつかんでいただいて、気になる一着のところから読んでいただければ十分です。もちろん、全部読んでくださる方は大歓迎です。長いので、温かい飲み物をご用意ください。

早見表:4着を並べてみると

先に結論だけお伝えすると、こうなります。

  • いちばん暖かいのは、クラシカルドレスコート。生地がいちばん厚いのはビッグカラーコートですが、丈が長く全身を包むドレスコートが一歩上。僅差でビッグカラーコート、スタンドカラーベルテッドコートが続きます。ほんと僅差です。

  • いちばん重いのは、クラシカルドレスコート。裾を広げるために、生地をいちばんたくさん使っています。こんなの他に売ってないですよね。

  • いちばん軽いのは、フレンチハーフコート。短めの丈で生地の使用量が少ないぶん、軽やかです。あえてそうしています。12月販売なので春先まで着れますね。

  • いちばん汎用性が高いのは、スタンドカラーベルテッドコートとフレンチハーフコート。「最初の一着」ならこのどちらかをおすすめします。

1. big collar coat(ビッグカラーコート)

「大きな襟を、甘くしない。」

暖かさ ★★★★☆ 
重さ  しっかり重め 
汎用性 ★★★☆☆

今年の4着のなかで、一番生地が厚いのはこのコートです。そして「コート自体が主役」なのもビッグカラーコートとドレスコートかもしれません。

大きな襟は、それだけで装いの主役になります。けれど同時に、どうしても可愛らしさに寄っていきやすいディテールでもあります。やわらかな色で仕立てれば、たちまち少女のような表情に。それはそれで魅力的ですが、このコートで目指したのはその逆でした。大きな襟を、大人がクールに着るという楽しさです。

テイスト:グレーで、クールにモダンに

色はグレーを選びました。黒ほど強くなく、ベージュほどやわらかくない。都会的で、少しだけ冷たさのある色です。近くで見ると色が細かく混ざり合ったような奥行きがあって、冬の光の下で表情を変えます。

前からは華やかに、後ろからは無骨に

腰の共布ベルトは、バックルの芯まで同じ生地でくるんだ「くるみバックル」です。ベルト穴は菊穴に。金属をほとんど見せないので、グレーの面がどこまでも途切れず、全体がミニマルにまとまります。前はダブルブレスト。ボタンとポケットの位置は、サンプルの段階から少し上へ引き上げて、全身のバランスを整え直しました。

後ろ姿には、肩から背中へ垂れるケープのような当て布を付けています。トレンチコートの背中にある、雨を受け流すための当て布を思わせるディテールです。前から見ると大きな襟が華やかに、後ろから見るとこの当て布が無骨に。この正反対の同居が、甘さにも硬さにも偏りすぎない理由です。袖口にもベルトを付け、手首まわりにほどよい緊張感を残しています。



暖かさと重さ:生地はいちばん厚く、しっかり重い

このコートの暖かさを支えているのは、三つの理由です。

  1. 生地:ウール90%にナイロン10%。今年の4着のなかでも、ウールの割合がいちばん高い生地のひとつです。表面を起毛させて密に詰めた、しっかりと厚みのある生地を選んでいます。
  2. 襟:肩先近くまで広がる大きな襟が、首元をすっぽりと覆ってくれます。台襟にフックを付けているので、首元を閉じることもできます。
  3. 仕立て:大きな襟や身頃の形をきれいに保つために、芯地をしっかり貼っています。着丈もひざ下までしっかり包みます。ロング丈ではありません。

生地の厚さは4着でいちばん。ただ、さらに丈の長いクラシカルドレスコートのほうが体を包む面積が広いので、全身の暖かさではわずかに譲ります。そして、重さはしっかりあります。羽織った瞬間に「あ、コートを着た」とわかる手応えです。ただ、この重さは生地の厚みの裏返しでもあります。軽いコートを層で重ねるより、重いコート一枚で完結させたい方には、むしろ理想的だと思います。そしてシルエットもこの硬さによって甘さ控えめの世界観になっています。

身幅は4着のなかでいちばんゆったりしています。厚手のニットを中に着ても、形が崩れません。

汎用性:主役だからこそ、合わせは簡単

汎用性の星が三つなのは、このコートがどうしても「主役」だからです。毎日着てももちろん素敵ですが、周りの人には「あ、今日もあのコートの人だ」と覚えてもらえるくらいの存在感があります。

そのかわり、合わせる服は本当になんでもいい。黒のスラックスにも、ロングスカートにも、デニムにも。時にもミニ丈のスカートやパンツも。ベルトをぎゅっと締めればウエストの位置がはっきり出て、クールでエレガントに。ほどけば、ゆったりとしたAラインのコートとして、肩の力を抜いて羽織れます。ベルトひとつで、その日の気分を選べるコートです。

こんな方に

  • 厚手でしっかりした生地のコートが好きな方
  • 服はシンプルにして、コートで印象をつくりたい方
  • 大きな襟に憧れはあるけれど、可愛くなりすぎるのは避けたい方


2. stand collar belted coat(スタンドカラーベルテッドコート)

「直線だけで、マニッシュに仕立てる。」

暖かさ ★★★★☆ 
重さ  それなりの重さ 
汎用性 ★★★★★

今年のコートのなかで、いちばん静かな顔をしているのがこの一着です。一番「毎日着られる」のも、このコートかもしれません。

装飾を足すのではなく、ミニマルで静かなデザインに集中して作りました。「4着のうち一着だけ、何にでも合わせられるものを」と聞かれたら、僕はたぶんこれをお勧めします。

テイスト:深いブラウンの、ミニマルなマニッシュ

襟は、首に沿ってすっと立ち上がるスタンドカラー。そこから前身頃へ、まっすぐな切り替えの線を落としました。左右対称ではなく、身頃の片側だけを通る線です。この非対称な直線が、静かなコートにほんの少しの緊張感を与えてくれます。

前立ては、ボタンを内側に隠す比翼仕立て。前を閉じると、正面に見えるのはこの直線だけです。ボタンの粒が並ばない分、生地の面がどこまでも続き、立ち姿がすっきりとまとまります。

色は、黒ほど強くなく、それでいて冬の装いをしっかりと締めてくれる深いブラウン。黒やグレーの服にも、アイボリーやベージュにも合うので、クローゼットのどの服とも喧嘩しません。

カチャっと留める、ベルト

このコートのいちばんの特徴はベルトです。中央の金具をカチャっと差し込むだけで留まる仕様にしました。

コートのベルトって、結ぶのに手間取ったり、一日のうちにほどけてきたりと、意外と扱いが難しいものですよね。このベルトなら迷わずに留められて、位置もぴたりと決まります。アンティークゴールドの金具は、深いブラウンによく映えます。

前を閉じてベルトを締めれば、まるでワンピースのように一枚で着こなせる佇まいに。前を開けて羽織れば、ロング丈がそのまま縦のラインとなって、ガウンのような軽やかさに。同じコートにも関わらず、印象が大きく変わります。



暖かさと重さ:風を通さない二重織と、いちばん長い丈

生地は、ウール75%のしっかりとした二重織です。二枚分の布を一度に織り上げているので、生地の中に空気の層ができ、風を通しにくく、保温性にも優れています。近くで見ると繊細な織り目があって、光の当たり方でブラウンにやわらかな陰影が生まれます。

そして、着丈は4着のなかでいちばん長い設計上S約118cm・M約128cm。足首近くまで包まれるので、体感の暖かさはかなりあります。スタンドカラーの首元はホックで閉じられるので、風の入り口も小さい。ウールの割合が少し控えめな分、暖かさはクラシカルドレスコートとビッグカラーに一歩譲るくらいです。

重さは、二重織とロング丈の分、しっかりあります。ただ、袖はラグランスリーブにしています。肩に縫い目を作らず、襟ぐりから脇へ斜めに切り替えた袖のことです。肩周りに窮屈さがないので、重さが一点にかかりにくく、中に厚手のニットを着込んでも腕を動かしやすいままです。真冬の重ね着を前提に選んだ形です。

汎用性:いちばん高い

装飾がないから、何でも合う。ブラウンだから、黒も白も合わせられる。ベルトと前の開け閉めで、きちんともゆるやかにも振れる。この三つがそろっているので、汎用性は星5つにしました。

ワイドパンツにも、ロングスカートにも。お仕事の日にも、少しきちんとした食事の日にも。毎朝の装いの「最後の一枚」として、迷わずに手に取っていただけると思います。

こんな方に

  • 一着で冬じゅう着回したい、「最初の一着」を探している方
  • パンツもスカートも、どちらもよく着る方
  • 甘さよりも、すっきりとしたマニッシュさが好きな方


3. classical dress coat(クラシカルドレスコート)

「まるでドレスのように、歩みとともに揺れる一着。」

暖かさ ★★★★★ 
重さ  いちばん重い 
汎用性 ★★★☆☆

去年の冬、あっという間に在庫がなくなってしまったコートが、戻ってきました。「再販はありますか?」という声を、本当にたくさんいただいた一着です。お待たせしました。

服づくりを続けていると「これはなぜ、今まで作らなかったのだろう」と思うことがあります。このコートは、まさにそういう一着でした。冬の街を、背筋を伸ばして歩くための、重厚さとしなやかさを併せ持つコート。納得できるバランスを見つけるまでには、少し時間がかかりました。

テイスト:いちばんクラシカルで、いちばんドレッシー

シルエットは、あくまでドレス的です。上半身は体に沿うようにすっきりと、裾に向かって大胆に広がるフレアライン。コートにしては珍しい形ですが、着てみるとどこか自然です。歩くたびに裾が揺れ、その揺れに重厚な雰囲気が宿ります。

色はブラック。襟には微起毛の別珍を使い、光の反射を抑えた深い黒が、顔まわりを引き締めます。同じ黒でも、生地が変わるだけでこんなに表情が変わるのかと、作った本人も毎回少し感動しています。

古い本の挿絵に出てくるような、クラシカルな服が好きな方には、たぶん説明はいらないと思います。

丁寧に積み上げたディテール

  • アジャストベルト:ウエスト両脇に配した小さなベルトです。実用性以上に構造のアクセントとなって、後ろ姿に静かな陰影を与えます。
  • 比翼仕立ての前立て:ボタンを隠すことで、フレアの線がそのまま主役になります。
  • 金属ボタン:袖口とアジャスト部分にだけ、金属のボタンを。クラシカルな装いに、ほんの少しの重みと緊張感を添えています。

過剰な装飾は排して、あくまで構造そのもので見せる形。ボリュームがありながらも、着膨れしない美しさを意識しました。



暖かさと重さ:いちばん暖かく、いちばん重い

身頃は、ウール80%の二重織です。触れた瞬間に伝わるしっとりとした質感と、空気を含むような膨らみがあります。毛羽を抑えて上品な起毛感にとどめながら、風を通しにくく、保温性も高い。「見せるため」の服であるより前に、「寒さを防ぐため」の服としても自信を持ってお届けできる仕立てです。着丈も長く、生地の厚みそのものはビッグカラーに譲りますが、ひざ下まですっぽり包む丈のぶん、全身の暖かさでは今年の4着でいちばんです。

ただ、重さも4着のなかでいちばんです。裾をたっぷり広げるために生地をいちばん多く使っているので、これはもう、あの揺れの代償だと思っていただければ。冬という季節に必要なのは、防寒だけでなく、どこか背筋を正してくれるような「重み」かもしれない。作りながら、そんなことを考えていました。

ローゲージのざっくりした大きなニットより、ハイゲージのタートルネックやワンピースの上にすっと羽織るのが、いちばんきれいに見えます。

汎用性:毎日よりも、「ここぞ」の日に

汎用性は星三つにしました。理由は、このコートが持っている空気が、あまりにも「クラシカル」な顔をしているからです。スニーカーにデニムといったカジュアルな合わせもできなくはないけれど、このコートが輝くのは、ロング丈のワンピースやスカートと合わせたとき。美術館へ出かける日、大切な人と食事をする夜、年末年始のご挨拶。そういう「ここぞ」の日に、頼りになる一着です。

こんな方に

  • foufouのワンピースに、いちばん似合うコートを探している方
  • 去年、買い逃してしまった方
  • 流行よりも、数年後にも美しいと思える一着が欲しい方

このコートが、冬の空気とよく似合いますように。


4. french half coat(フレンチハーフコート)

「毎日の、ちょうどいいきちんと。」

暖かさ ★★★☆☆ 
重さ  やや軽め 
汎用性 ★★★★★

4着目は、12月にお届けする予定の新作、フレンチハーフコートです。ひと足早く、ここでご紹介させてください。

テイスト:王道のフレンチクラシックを、コンパクトに

ネイビーのダブルブレストに、きちんとした襟。ポケットは両玉縁にフラップを重ね、袖口には小さなタブを。

ひとつひとつは、紳士服のコートに昔からある素直なディテールです。奇をてらったところはありません。そのかわり、ボタンの配置や丈のバランスで、「どこで着てもきちんと見えるけれど、研ぎ澄まされすぎない」ところを探しました。

前はダブルの4つボタンが2列。このボタンの並びが、シンプルなネイビーにちょうどいいリズムをつくってくれます。

シルエットはタイトすぎないふわりとしたシルエット。フレンチシックな香りがコーデ全体を品よく小粋にまとめてくれます。

暖かさと重さ:生地はしっかり、丈は軽やか

生地はウール90%、ナイロン10%。ビッグカラーコートと同じくらいウールの割合が高い生地で、ウールが寒さを防ぎ、ナイロンがハリと丈夫さを加えてくれます。もちろん総裏です。ただ生地自体は一番軽いです。そこで防寒は3にしています。車移動が多い、重いコートは苦手。毎日使いたい。そう言った方にはとってもお勧めです。

着丈は4着のなかでいちばん短い丈でハーフの丈感です。「ウールの暖かさはしっかり、重さは控えめ」。ロングコートを重たく感じる方に、ちょうどいい一着です。

汎用性:パンツにもスカートにも、平日にも休日にも

ネイビーという色、短めの丈、王道のディテール。この三つがそろうと、合わせる服をほとんど選びません。スラックスにもデニムにも、ワンピースにも。お仕事の日にも、自転車で近所へ出かける日にも。

スタンドカラーベルテッドコートが「ロング丈の万能選手」だとすれば、こちらは「ショート丈の万能選手」。どちらを選んでも、冬のあいだ着る服に困ることはあまりないと思います。

こんな方に

  • パンツスタイルが多い方、自転車や歩きが多い方
  • ウールの暖かさは欲しいけど、ロングは重いと感じる方
  • 何年も着られる、王道のネイビーのコートを一着持っておきたい方


どれを選ぶ?タイプ別のおすすめと、よくいただく質問

ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。飲み物は冷めていませんか。最後に、「こういう方にはこれ」をまとめておきます。

あなたに合うのは、この一着

よくいただく質問

Q. お手入れは大変ですか?

ウールのコートは、シーズン終わりに1回クリーニングに出していただくだけでも十分です。それも難しければ、Amazonや量販店でお安い価格のブラシを買って、着た後にブラッシングをしてあげるといいかもしれません。

雨が降った後は、乾いたタオルで擦らずに、叩くように水をとってあげてください。

思ったよりも、手入れは大変ではありません。

Q. いちばん暖かいのは結局どれですか?

全身の暖かさでいえば、クラシカルドレスコートです。生地がいちばん厚いのはビッグカラーコートですが、ドレスコートはウールの二重織で風を通しにくく、ひざ下まで包む丈のぶん体を覆う面積が広い。僅差でビッグカラーコート、スタンドカラーベルテッドコートが続きます。この三着はどれも、真冬のふだん使いなら十分すぎるくらい暖かいです。

Q. いちばん重いのは?肩が凝るのが心配です。

いちばん重いのはクラシカルドレスコート、次いでビッグカラーコートとスタンドカラーベルテッドコートです。少し過剰に表現しているかもなので怖がりすぎない方がいいかもです。それでも安心を取りたい方はフレンチハーフコートを。ロングがいいけれど重さが心配な方には、ラグラン袖で重さが分散しやすいスタンドカラーベルテッドコートがおすすめです。

Q. 一着しか買えないなら?

ロング派ならスタンドカラーベルテッドコート、ショート派ならフレンチハーフコートです。ただ、「この一着を着るために冬が待ち遠しい」と思える一着があるなら、それが一番の正解だとも思います。

Q. 二着目を選ぶなら?

丈と役割の違う組み合わせがおすすめです。たとえば「スタンドカラーベルテッドコート+フレンチハーフコート」なら、ロングとショートを予定や移動手段に合わせて使い分けられます。「フレンチハーフコート+クラシカルドレスコート」なら、日常と「ここぞ」の日を二着で分担できます。

Q. サイズに迷っています。

4着ともS・Mの2サイズ展開です。特にスタンドカラーベルテッドコートとクラシカルドレスコートは丈が長いので、各商品ページのサイズ表を一度ご覧ください。店舗では実際に袖を通していただけます。


おわりに

コートは、暖かさや重さといった条件だけでなく「これを着ている自分が好き」と思える一着を選んでいただけたらと思います。この比較が、その一着にたどり着くための地図になれば嬉しいです。

どの一着も、数年後の冬にもちゃんと着たくなるように作りました。ぜひ良い出会いがありますように!

デザイナー マール

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