国産スカラップが尊すぎるので知ってほしい byデザイナーのマール

服を見るとき、みなさんはどこから見ますか。色、形、素材。
僕はというと、まず襟を見ます。次に袖口を見ます。つまり、端っこばかり見ています。

今日はその端っこの中でも最近ハマってる端っこの話をさせてください。

主役は「スカラップ」です。

スカラップとは、布の縁を波形に仕立てたもののこと。英語のscallopは、ホタテ貝を意味します。ホタテの殻のふちの、あのなみなみ。そう、僕は服の襟にホタテを並べている男なのです。字面にすると急に海鮮っぽくなりますが、一応ファッションブランドの仕事です。

ここ数年で気づけばスカラップは、foufouの定番ディテールになりました。THE DRESS #64のスカラップバイカラーワンピース、スカラップワンピース“エマ”、そしてスカラップテーラードジャケット。ホタテは着実に増えています。

ただ、スカラップは甘くなりがちなモチーフです。小さな波がちまちまと並ぶと、たちまちファンタジーの世界へ連れていかれる。それはそれで可愛いのですが、僕が目指したいのは大人がすっと着られるスカラップ。

だから波は少しだけ大きめに、リズムよく。しかし逆に大きすぎても滑らかな曲線がfoufouらしい律した雰囲気をなくすので絶妙にしなくてはなりません。

たとえばグレーの生地に白いスカラップをのせると、甘さは一歩引いて、すっと浮かび上がる。可愛いのに、どこかシャキッとしている。そのくらいの距離感が大人にはちょうどいいと思うのです。

さて、ここからが本題。なぜ職人さんの手でつくられる国産スカラップが尊いのか。

いまは、布をレーザーで正確にカットする技術があります。速いし均一だし文句のつけようがない。ところが、これはこれで均一すぎるのです。並んだ波がみんなまったく同じ顔をしていると、なぜか少しだけ、よそよそしい。何だかホタテというよりは「工業製品」です。工業製品にも可愛さはあるが、ニュアンスがちょいと違う。

foufouのスカラップは、大阪の職人さんが手仕事で仕上げています。一山ずつ、人の手でカットし、縫い上げていく。すると波のひとつひとつに、ほんのわずかな「ゆらぎ」みたいなものが生まれます。

木目や波打ち際や焚き火の炎を、ずっと眺めていられるのと同じで、このゆらぎがあるから、スカラップはぬくもりがあります。僕はこれを勝手に「ホタテの1/fゆらぎ」と呼んでいます。社内では、誰にも浸透していません。

とはいえ「手仕事なら気ままでいい」というわけではありません。ゆらぎは、あくまでほんの少し。大きすぎれば雑に見え、なさすぎれば機械と変わらない。なかでも難所は、波と波のつなぎ目、いわば谷底の部分です。ここがぴたりと決まると、波全体がしゃんと立つ。正確でありながら、人の手の気配を残す。

国内でこうした仕事を引き受けてくれる職人さんは、年々少なくなっていると聞きます。正直に言えば、手間のぶんコストもかかります。それでも、「この波、もう少しだけ大きくできませんか」という面倒くさいデザイナーのお願いに、付き合ってもらえることは、何にも代えがたい。たぶん先方からは、相当なマニアに見えていると思います。

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